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〘380㌻〙

第1章

1 人ひとよりに非あらず、人ひとに由よるにも非あらず、イエス・キリスト及および之これを死人しにんの中うちより甦よみがへらせ給たまひし父󠄃ちちなる神かみに由よりて使󠄃徒しととなれるパウロ、 2 及および我われと偕ともにある凡すべての兄弟きゃうだい、書ふみをガラテヤの諸しょ敎會けうくわいに贈おくる。 3 願ねがはくは、我われらの父󠄃ちちなる神かみおよび主しゅイエス・キリストより賜たまふ恩惠めぐみと平󠄃安へいあんと汝なんぢらに在あらんことを。 4 主しゅは我われらの父󠄃ちちなる神かみの御意みこゝろに隨したがひて、我われらを今いまの惡あしき世よより救すくひ出いださんとて、己おのが身みを我われらの罪つみのために與あたへたまへり。 5 願ねがはくは榮光えいくわう、世々よゝ限かぎりなく神かみにあらん事ことを、アァメン。

6 我われは汝なんぢらが斯かくも速󠄃すみやかにキリストの恩惠めぐみをもて召めし給たまひし者ものより離はなれて異ことなる福音󠄃ふくいんに移うつりゆくを怪あやしむ。 7 此これは福音󠄃ふくいんと言いふべき者ものにあらず、ただ或ある人々ひとびとが汝なんぢらを擾みだしてキリストの福音󠄃ふくいんを變かへんとするなり。 8 されど我等われらにもせよ、天てんよりの御使󠄃みつかひにもせよ、我われらの曾かつて宣傳のべつたへたる所󠄃ところに背そむきたる福音󠄃ふくいんを汝なんぢらに宣傳のべつたふる者ものあらば詛のろはるべし。 9 われら前󠄃さきに言いひし如ごとく、今いままた言いはん、汝なんぢらの受うけし所󠄃ところに背そむきたる福音󠄃ふくいんを宣傳のべつたふる者ものあらば、詛のろはるべし。

10 我われいま人ひとに喜よろこばれんとするか、或あるひは神かみに喜よろこばれんとするか、抑そもそもまた人ひとを喜よろこばせんことを求もとむるか。もし我われなほ人ひとを喜よろこばせをらば、キリストの僕しもべにあらじ。
 380㌻ 

11 兄弟きゃうだいよ、われ汝なんぢらに示す、わが傳つたへたる福音󠄃ふくいんは、人ひとに由よれるものにあらず。 12 我われは人ひとより之これを受うけず、また敎をしへられず、唯たゞイエス・キリストの默示もくしに由よれるなり。 13 我わがユダヤ敎けうに於おける曩さきの日ひの擧動ふるまひは、なんぢら旣󠄁すでに聞きけり、即すなはち烈はげしく神かみの敎會けうくわいを責せめ、かつ暴あらしたり。 14 又󠄂またわが國人くにびとのうち、我われと同おなじ年輩ねんぱいなる多おほくの者ものにも勝󠄃まさりてユダヤ敎けうに進󠄃すゝみ、わが先祖せんぞたちの言傳いひつたへに對たいして甚はなはだ熱心ねっしんなりき。 15 然されど母ははの胎たいを出いでしより我われを選󠄄えらび別わかち、その恩惠めぐみをもて召めし給たまへる者もの 16 御子みこを我わが內うちに顯あらはして其その福音󠄃ふくいんを異邦󠄆人いはうじんに宣傳のべつたへしむるを可よしとし給たまへる時とき、われ直たゞちに血肉󠄁けつにくと謀はからず、 17 我われより前󠄃さきに使󠄃徒しととなりし人々ひとびとに逢あはんとてエルサレムにも上のぼらず、アラビヤに出いで往󠄃ゆきて遂󠄅つひにまたダマスコに返󠄄かへれり。

18 その後のち三年さんねんを歷へてケパを尋󠄃たづねんとエルサレムに上のぼり、十じふ五ご日にちの間あひだかれと偕ともに留とゞまりしが、 19 主しゅの兄弟きゃうだいヤコブのほか孰いづれの使󠄃徒しとにも逢あはざりき。 20 (茲こゝに書かきおくる事ことは、視みよ、神かみの前󠄃まへにて僞いつはらざるなり)〘276㌻〙 21 その後のちシリヤ、キリキヤの地方ちはうに往󠄃ゆけり。 22 キリストにあるユダヤの諸しょ敎會けうくわいは我わが顏かほを知しらざりしかど、 23 ただ人々ひとびとの『われらを前󠄃さきに責せめし者もの、曾かつて暴あらしたる信仰しんかうの道󠄃みちを今いまは傳つたふ』といふを聞きき、 24 わが事ことによりて神かみを崇あがめたり。

第2章

1 その後のち十四年じふよねんを歷へてバルナバと共ともに、テトスをも連󠄃つれて、復またエルサレムに上のぼれり。 2 我わが上のぼりしは默示もくしに因よりてなり。斯かくて異邦󠄆人いはうじんの中うちに宣のぶる福音󠄃ふくいんを彼かれらに吿つげ、また名なある者ものどもに私ひそかに吿つげたり、これは我わが走はしること、又󠄂またすでに走はしりしことの空󠄃むなしからざらん爲ためなり。 3 而しかして我われと偕ともなるギリシヤ人びとテトスすら割󠄅禮かつれいを强しひられざりき。
 381㌻ 
4 これ私ひそかに入いりたる僞にせ兄弟きゃうだいあるに因よりてなり。彼かれらの忍󠄄しのび入いりたるは、我われらがキリスト・イエスに在ありて有󠄃もてる自由じいうを窺うかゞひ、且かつわれらを奴隷どれいとせん爲ためなり。 5 然されど福音󠄃ふくいんの眞󠄃理まことの汝なんぢらの中うちに留とゞまらんために、我われら一ひと時ときも彼かれらに讓ゆずり從したがはざりき。 6 然しかるに、かの名なある者ものどもより――彼かれらは如何いかなる人ひとなるにもせよ、我われには關係かゝはりなし、神かみは人ひとの外面うはべを取とり給たまはず――實げにかの名なある者ものどもは我われに何なにをも加くはへず、 7 反かへつてペテロが割󠄅禮かつれいある者ものに對たいする福音󠄃ふくいんを委ゆだねられたる如ごとく、我わが割󠄅禮かつれいなき者ものに對たいする福音󠄃ふくいんを委ゆだねられたるを認󠄃みとめ、 8 (ペテロに能力ちからを與あたへて割󠄅禮かつれいある者ものの使󠄃徒しととなし給たまひし者ものは、我われにも異邦󠄆人いはうじんのために能力ちからを與あたへ給たまへり) 9 また我われに賜たまはりたる恩惠めぐみをさとりて、柱󠄃はしらと思おもはるるヤコブ、ケパ、ヨハネは、交󠄄誼まじはりの印しるしとして我われとバルナバとに握手あくしゅせり。これは我われらが異邦󠄆人いはうじんにゆき、彼かれらが割󠄅禮かつれいある者ものに往󠄃ゆかん爲ためなり。 10 唯たゞその願ねがふところは我われらが貧󠄃まづしき者ものを顧󠄃かへりみんことなり、我われも固もとより此この事ことを勵はげみて行おこなへり。

11 然されどケパがアンテオケに來きたりしとき責せむべき事ことのありしをもて、面前󠄃まのあたりこれと諍あらそひたり。 12 その故ゆゑは或ある人々ひとびとのヤコブの許もとより來きたるまでは、かれ異邦󠄆人いはうじんと共ともに食󠄃しょくしゐたるに、かの人々ひとびとの來きたりてよりは、割󠄅禮かつれいある者ものどもを恐おそれ、退󠄃しりぞきて異邦󠄆人いはうじんと別わかれたり。 13 他ほかのユダヤ人びとも彼かれとともに僞行いつはりごとをなし、バルナバまでもその僞行いつはりごとに誘さそはれゆけり。 14 然されど我われかれらが福音󠄃ふくいんの眞󠄃理まことに循したがひて正たゞしく步あゆまざるを見みて、會衆くわいしゅうの前󠄃まへにてケパに言いふ『なんぢユダヤ人びとなるにユダヤ人びとの如ごとくせず、異邦󠄆人いはうじんのごとく生活せいくわつせば、何なにぞ强しひて異邦󠄆人いはうじんをユダヤ人びとの如ごとくならしめんとするか』
 382㌻ 
15 我われらは生來うまれながらのユダヤ人びとにして罪人つみびとなる異邦󠄆人いはうじんにあらざれども、〘277㌻〙 16 人ひとの義ぎとせらるるは律法おきての行爲おこなひに由よらず、唯ただキリスト・イエスを信しんずる信仰しんかうに由よるを知しりて、キリスト・イエスを信しんじたり。これ律法おきての行爲おこなひに由よらず、キリストを信しんずる信仰しんかうによりて義ぎとせられん爲ためなり。律法おきての行爲おこなひによりては義ぎとせらるる者もの、一人ひとりだになし。 17 若もしキリストに在ありて義ぎとせられんことを求もとめて、なほ罪人つみびとと認󠄃みとめられなば、キリストは罪つみの役者えきしゃなるか、決けっして然しからず。 18 我われもし前󠄃さきに毀こぼちしものを再ふたゝび建󠄄たてなば、己おのれみづから犯罪者はんざいしゃたるを表あらはす。 19 我われは神かみに生いきんために、律法おきてによりて律法おきてに死しにたり。 20 我われキリストと偕ともに十字架じふじかにつけられたり。最早もはやわれ生いくるにあらず、キリスト我わが內うちに在ありて生いくるなり。今いまわれ肉󠄁體にくたいに在ありて生いくるは、我われを愛あいして我わがために己おのが身みを捨󠄃すて給たまひし神かみの子こを信しんずるに由よりて生いくるなり。 21 我われは神かみの恩惠めぐみを空󠄃むなしくせず、もし義ぎとせらるること律法おきてに由よらば、キリストの死しに給たまへるは徒然いたづらなり。

第3章

1 愚おろかなる哉かな、ガラテヤ人びとよ、十字架じふじかにつけられ給たまひしままなるイエス・キリスト、汝なんぢらの眼前󠄃めのまへに顯あらはされたるに、誰たが汝なんぢらを誑たぶらかししぞ。 2 我われは汝なんぢ等らより唯たゞこの事ことを聞きかんと欲ほっす。汝なんぢらが御靈みたまを受うけしは律法おきての行爲おこなひに由よるか、聽ききて信しんじたるに由よるか。 3 汝なんぢらは斯かくも愚おろかなるか、御靈みたまによりて始はじまりしに、今いま肉󠄁にくによりて全󠄃まったうせらるるか。 4 斯程󠄃かほどまで多おほくの苦難くるしみを受うけしことは徒然いたづらなるか、徒然いたづらにはあるまじ。 5 然さらば汝なんぢらに御靈みたまを賜たまひて汝なんぢらの中うちに能力ちからある業わざを行おこなひ給たまへるは、律法おきての行爲おこなひに由よるか、聽ききて信しんずるに由よるか。 6 錄しるして『アブラハム神かみを信しんじ、その信仰しんかうを義ぎとせられたり』とあるが如ごとし。
 383㌻ 

7 されば知しれ、信仰しんかうに由よる者ものは、是これアブラハムの子こなるを。 8 聖󠄃書せいしょは神かみが異邦󠄆人いはうじんを信仰しんかうに由よりて義ぎとし給たまふことを知しりて、預あらかじめ福音󠄃ふくいんをアブラハムに傳つたへて言いふ『なんぢに由よりて、もろもろの國人くにびとは祝福しくふくせられん』と。 9 この故ゆゑに信仰しんかうによる者ものは、信仰しんかうありしアブラハムと共ともに祝福しくふくせらる。 10 されど凡すべて律法おきての行爲おこなひによる者ものは詛のろひの下したにあり。錄しるして『律法おきての書ふみに記しるされたる凡すべての事ことを常つねに行おこなはぬ者ものはみな詛のろはるべし』とあればなり。 11 律法おきてに由よりて神かみの前󠄃まへに義ぎとせらるる事ことなきは明あきらかなり『義人ぎじんは信仰しんかうによりて生いくべし』とあればなり。 12 律法おきては信仰しんかうに由よるにあらず、反かへつて『律法おきてを行おこなふ者ものは之これに由よりて生いくべし』と云いへり。 13 キリストは我等われらのために詛のろはるる者ものとなりて律法おきての詛のろひより我われらを贖あがなひ出いだし給たまへり。錄しるして『木きに懸かけらるる者ものは凡すべて詛のろはるべし』と云いへばなり。〘278㌻〙 14 これアブラハムの受うけたる祝福しくふくのイエス・キリストによりて異邦󠄆人いはうじんにおよび、且かつわれらが信仰しんかうに由よりて約束やくそくの御靈みたまを受うけん爲ためなり。

15 兄弟きゃうだいよ、われ人ひとの事ことを藉󠄃かりて言いはん、人ひとの契󠄅約けいやくすら旣󠄁すでに定さだむれば、之これを廢はいし、また加くはふる者ものなし。 16 かの約束やくそくはアブラハムと其その裔すゑとに與あたへ給たまひし者ものなり。多おほくの者ものを指さすごとく『裔々すゑずゑに』とは云いはず、一人ひとりを指さすごとく『なんぢの裔すゑに』と云いへり、これ即すなはちキリストなり。 17 然されば我われいはん、神かみの預あらかじめ定さだめ給たまひし契󠄅約けいやくは、その後のち四百三十年しひゃくさんじふねんを歷へて起󠄃おこりし律法おきてに廢はいせらるることなく、その約束やくそくも空󠄃むなしくせらるる事ことなし。 18 もし嗣業しげふを受うくること律法おきてに由よらば、もはや約束やくそくには由よらず、然しかるに神かみは約束やくそくに由よりて之これをアブラハムに賜たまひたり。 19 然されば律法おきては何なにのためぞ。これ罪つみの爲ために加くはへ給たまひしものにて、御使󠄃みつかひたちを經へて中保なかだちの手てによりて立たてられ、約束やくそくを與あたへられたる裔すゑの來きたらん時ときにまで及およぶなり。
 384㌻ 
20 (中保なかだちは一方いっぱうのみの者ものにあらず、然されど神かみは唯一ゆゐいつに在いませり) 21 然さらば律法おきては神かみの約束やくそくに悖もとるか、決けっして然しからず。もし人ひとを生いかすべき律法おきてを與あたへられたらんには、實げに義ぎとせらるるは律法おきてに由よりしならん。 22 然されど聖󠄃書せいしょは凡すべての者ものを罪つみの下したに閉とぢ籠こめたり。これ信しんずる者もののイエス・キリストに對たいする信仰しんかうに由よれる約束やくそくを與あたへられん爲ためなり。

23 信仰しんかうの出いで來きたらぬ前󠄃さきは、われら律法おきての下したに守まもられて、後のちに顯あらはれんとする信仰しんかうの時ときまで閉とぢ籠こめられたり。 24 斯かく信仰しんかうによりて我われらの義ぎとせられん爲ために、律法おきては我われらをキリストに導󠄃みちびく守役もりやくとなれり。 25 されど信仰しんかうの出いで來きたりし後のちは、我等われらもはや守役もりやくの下したに居をらず。 26 汝なんぢらは信仰しんかうによりキリスト・イエスに在ありて、みな神かみの子こたり。 27 凡おほよそバプテスマに由よりてキリストに合あひし汝なんぢらは、キリストを衣きたるなり。 28 今いまはユダヤ人びともギリシヤ人びともなく、奴隷どれいも自主じしゅもなく、男をとこも女をんなもなし、汝なんぢらは皆みなキリスト・イエスに在ありて一體いったいなり。 29 汝なんぢ等らもしキリストのものならば、アブラハムの裔すゑにして約束やくそくに循したがへる世嗣よつぎたるなり。

第4章

1 われ言いふ、世嗣よつぎは全󠄃業ぜんげふの主しゅなれども、成󠄃人おとなとならぬ間あひだは僕しもべと異ことなることなく、 2 父󠄃ちちの定さだめし時ときの至いたるまでは後見者うしろみと家令かれいとの下したにあり。 3 斯かくのごとく我われらも成󠄃人おとなとならぬほどは、世よの小學せうがくの下したにありて僕しもべたりしなり。 4 然されど時とき滿みつるに及およびては、神かみその御子みこを遣󠄃つかはし、これを女をんなより生うまれしめ、律法おきての下したに生うまれしめ給たまへり。〘279㌻〙 5 これ律法おきての下したにある者ものをあがなひ、我等われらをして子こたることを得えしめん爲ためなり。 6 斯かく汝なんぢら神かみの子こたる故ゆゑに、神かみは御子みこの御靈みたまを我われらの心こゝろに遣󠄃つかはして『アバ、父󠄃ちち』と呼よばしめ給たまふ。 7 されば最早もはやなんぢは僕しもべにあらず、子こたるなり、旣󠄁すでに子こたらば亦また神かみに由よりて世嗣よつぎたるなり。
 385㌻ 

8 然されど汝なんぢら神かみを知しらざりし時ときは、その實じつ神かみにあらざる神々かみ〴〵に事つかへたり。 9 今いまは神かみを知しり、寧むしろ神かみに知しられたるに、何なんぞ復またかの弱󠄃よわくして賤いやしき小學せうがくに還󠄃かへりて、再ふたゝびその僕しもべたらんとするか。 10 汝なんぢらは日ひと月󠄃つきと季節󠄄きせつと年としとを守まもる。 11 我われは汝なんぢらの爲ために働はたらきし事ことの或あるひは無む益えきにならんことを恐おそる。

12 兄弟きゃうだいよ、我われなんぢらに請󠄃こふ、われ汝なんぢ等らのごとく成󠄃なりたれば、汝なんぢら我わがごとく成󠄃なれ。汝なんぢら何事なにごとにも我われを害󠄅そこなひしことなし。 13 わが初はじめ汝なんぢらに福音󠄃ふくいんを傳つたへしは、肉󠄁體にくたいの弱󠄃よわかりし故ゆゑなるを汝なんぢら知しる。 14 わが肉󠄁體にくたいに汝なんぢらの試鍊こゝろみとなる者ものありたれど汝なんぢら之これを卑いやしめず、又󠄂またきらはず、反かへつて我われを神かみの使󠄃つかひの如ごとく、キリスト・イエスの如ごとく迎󠄃むかへたり。 15 汝なんぢらの其その時ときの幸福さいはひはいま何處いづこに在あるか。我われなんぢらに就つきて證あかしす、もし爲なし得うべくば己おのが目めを抉ゑぐりて我われに與あたへんとまで思おもひしを。 16 然しかるに我われなんぢらに眞󠄃まことを言いふによりて仇あたとなりたるか。 17 かの人々ひとびとの汝なんぢらに熱心ねっしんなるは善よき心こゝろにあらず、汝なんぢらを我われらより離はなして己おのれらに熱心ねっしんならしめんとてなり。 18 善よき心こゝろより熱心ねっしんに慕したはるるは、啻たゞに我わが汝なんぢらと偕ともにをる時ときのみならず、何時いつにても宜よろしき事ことなり。 19 わが幼兒をさなごよ、汝なんぢらの衷うちにキリストの形かたち成󠄃なるまでは、我われふたたび產うみの苦痛くるしみをなす。 20 今いまなんぢらに到いたりて我わが聲こゑを易かへんことを願ねがふ、汝なんぢらに就つきて惑まどへばなり。

21 律法おきての下したにあらんと願ねがふ者ものよ、我われにいへ、汝なんぢら律法おきてをきかぬか。 22 即すなはちアブラハムに子こ二人ふたりあり、一人ひとりは婢女はしためより、一人ひとりは自主じしゅの女をんなより生うまれたりと錄しるされたり。 23 婢女はしためよりの子こは肉󠄁にくによりて生うまれ、自主じしゅの女をんなよりの子こは約束やくそくによる。 24 この中うちに譬たとへあり、二人ふたりの女をんなは二ふたつの契󠄅約けいやくなり、その一ひとつはシナイ山やまより出いでて、奴隷どれいたる子こを生うむ、これハガルなり。
 386㌻ 
25 このハガルはアラビヤに在あるシナイ山やまにして今いまのエルサレムに當あたる。エルサレムはその子こらとともに奴隷どれいたるなり。 26 然されど上うへなるエルサレムは、自主じしゅにして我われらの母ははなり。 27 錄しるしていふ 『石女うまずめにして產うまぬものよ、喜よろこべ。 產うみの苦痛くるしみせぬ者ものよ、聲こゑをあげて呼よばはれ。 獨住󠄃ひとりずみの女をんなの子こは多おほし、夫をっとある者ものの子こよりも多おほし』とあり。〘280㌻〙 28 兄弟きゃうだいよ、なんぢらはイサクのごとく約束やくそくの子こなり。 29 然しかるに其その時とき、肉󠄁にくによりて生うまれし者もの、御靈みたまによりて生うまれし者ものを責せめしごとく今いまなほ然しかり。 30 されど聖󠄃書せいしょは何なにと云いへるか『婢女はしためとその子ことを逐󠄃おひいだせ、婢女はしための子こは自主じしゅの女をんなの子こと共ともに業げふを嗣つぐべからず』とあり。 31 されば兄弟きゃうだいよ、われらは婢女はしための子こならず、自主じしゅの女をんなの子こなり。

第5章

1 キリストは自由じいうを得えさせん爲ために我われらを釋とき放はなちたまへり。然されば堅かたく立たちて再ふたゝび奴隷どれいの軛くびきに繋つながるな。

2 視みよ我われパウロ汝なんぢらに言いふ、もし割󠄅禮かつれいを受うけば、キリストは汝なんぢらに益えきなし。 3 又󠄂またさらに凡すべて割󠄅禮かつれいを受うくる人ひとに證あかしす、かれは律法おきての全󠄃體ぜんたいを行おこなふべき負󠄅債おひめあり。 4 律法おきてに由よりて義ぎとせられんと思おもふ汝なんぢらは、キリストより離はなれたり、恩惠めぐみより墮おちたり。 5 我われらは御靈みたまにより、信仰しんかうによりて希望󠄇のぞみをいだき、義ぎとせらるることを待まてるなり。 6 キリスト・イエスに在ありては、割󠄅禮かつれいを受うくるも割󠄅禮かつれいを受うけぬも益えきなく、ただ愛あいに由よりてはたらく信仰しんかうのみ益えきあり。 7 なんぢら前󠄃さきには善よく走はしりたるに、誰たれが汝なんぢらの眞󠄃理まことに從したがふを阻はばみしか。 8 斯かゝる勸󠄂すゝめは汝なんぢらを召めしたまふ者ものより出いづるにあらず。 9 少すこしのパン種だねは粉󠄃こなの團塊かたまりをみな膨ふくれしむ。 10 われ汝なんぢらに就つきては、その聊いさゝかも異念いねんを懷いだかぬことを主しゅによりて信しんず。されど汝なんぢらを擾みだす者ものは、誰たれにもあれ、審判󠄄さばきを受うけん。
 387㌻ 
11 兄弟きゃうだいよ、我われもし今いまも割󠄅禮かつれいを宣傳のべつたへば、何なんぞなほ迫󠄃害󠄅はくがいせられんや。もし然しかりせば十字架じふじかの顚躓つまづきも止やみしならん。 12 願ねがはくは汝なんぢらを亂みだす者ものどもの自己みづからを不具󠄄ふぐにせんことを。

13 兄弟きゃうだいよ、汝なんぢらの召めされたるは自由じいうを與あたへられん爲ためなり。ただ其その自由じいうを肉󠄁にくに從したがふ機會をりとなさず、反かへつて愛あいをもて互たがひに事つかへよ。 14 それ律法おきての全󠄃體ぜんたいは『おのれの如ごとく、なんぢの隣となりを愛あいすべし』との一言いちげんにて全󠄃まったうせらるるなり。 15 心こゝろせよ、若もし互たがひに咬かみ食󠄃くらはば相あひ共ともに亡ほろぼされん。

16 我われいふ、御靈みたまによりて步あゆめ、さらば肉󠄁にくの慾よくを遂󠄅とげざるべし。 17 肉󠄁にくの望󠄇のぞむところは御靈みたまにさからひ、御靈みたまの望󠄇のぞむところは肉󠄁にくにさからひて互たがひに相あひ戻󠄃もどればなり。これ汝なんぢらの欲ほっする所󠄃ところをなし得えざらしめん爲ためなり。 18 汝なんぢ等らもし御靈みたまに導󠄃みちびかれなば、律法おきての下したにあらじ。 19 それ肉󠄁にくの行爲おこなひはあらはなり。即すなはち淫行いんかう・汚穢けがれ・好色かうしょく・〘281㌻〙 20 偶像󠄃ぐうざう崇拜すうはい・呪術󠄃まじわざ・怨恨うらみ・紛󠄃爭あらそひ・嫉妬ねたみ・憤恚いきどほり・徒黨とたう・分󠄃離ぶんり・異端いたん・ 21 猜忌そねみ・醉酒すゐしゅ・宴樂えんらくなどの如ごとし。我われすでに警いましめたるごとく、今いままた警いましむ。斯か ることを行おこなふ者ものは神かみの國くにを嗣つぐことなし。 22 然されど御靈みたまの果みは愛あい・喜悅よろこび・平󠄃和へいわ・寛容くわんよう・仁慈なさけ・善良ぜんりゃう・忠信ちゅうしん・ 23 柔和にうわ・節󠄄制せつせいなり。斯かゝるものを禁きんずる律法おきてはあらず。 24 キリスト・イエスに屬ぞくする者ものは肉󠄁にくとともに其その情󠄃じゃうと慾よくとを十字架じふじかにつけたり。

25 もし我われら御靈みたまに由よりて生いきなば、御靈みたまに由よりて步あゆむべし。 26 互たがひに挑いどみ、互たがひに妬ねたみて、虛むなしき譽ほまれを求もとむることを爲すな。
 388㌻ 

第6章

1 兄弟きゃうだいよ、もし人ひとの罪つみを認󠄃みとむることあらば、御靈みたまに感かんじたる者もの、柔和にうわなる心こゝろをもて之これを正たゞすべし、且かつおのおの自みづから省かへりみよ、恐おそらくは己おのれも誘さそはるる事ことあらん。 2 なんぢら互たがひに重おもきを負󠄅おへ、而しかしてキリストの律法おきてを全󠄃まったうせよ。 3 人ひともし有󠄃あること無なくして自みづから有󠄃ありとせば、是これみづから欺あざむくなり。 4 各自おのおのおのが行爲おこなひを驗ためし見みよ、さらば誇ほこるところは、他ほかにあらで、ただ己おのれにあらん。 5 各自おのおのおのが荷にを負󠄅おふべければなり。

6 御言みことばを敎をしへらるる人ひとは敎をしふる人ひとと凡すべての善よき物ものを共ともにせよ。 7 自みづから欺あざむくな、神かみは侮あなどるべき者ものにあらず、人ひとの播まく所󠄃ところは、その刈かる所󠄃ところとならん。 8 己おのが肉󠄁にくのために播まく者ものは肉󠄁にくによりて滅亡ほろびを刈かりとり、御靈みたまのために播まく者ものは御靈みたまによりて永遠󠄄とこしへの生命いのちを刈かりとらん。 9 われら善ぜんをなすに倦うまざれ、もし撓たゆまずば、時ときいたりて刈かり取とるべし。 10 この故ゆゑに機をりに隨したがひて、凡すべての人ひと、殊ことに信仰しんかうの家族かぞくに善ぜんをおこなへ。

11 視みよ、われ手てづから如何いかに大おほいなる文󠄃字もじにて汝なんぢらに書かき贈おくるかを。 12 凡おほよそ肉󠄁にくにおいて美うるわしき外觀みえをなさんと欲ほっする者ものは、汝なんぢらに割󠄅禮かつれいを强しふ。これ唯たゞキリストの十字架じふじかの故ゆゑによりて責せめられざらん爲ためのみ。 13 そは割󠄅禮かつれいをうくる者ものすら自みづから律法おきてを守まもらず、而しかも汝なんぢらに割󠄅禮かつれいをうけしめんと欲ほっするは、汝なんぢらの肉󠄁にくにつきて誇ほこらんが爲ためなり 14 然されど我われには我われらの主しゅイエス・キリストの十字架じふじかのほかに誇ほこる所󠄃ところあらざれ。之これによりて世よは我われに對たいして十字架じふじかにつけられたり、我わが世よに對たいするも亦また然しかり。 15 それ割󠄅禮かつれいを受うくるも受うけぬも、共ともに數󠄄かぞふるに足たらず、ただ貴たふときは新あらたに造󠄃つくらるる事ことなり。
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16 此この法のりに循したがひて步あゆむ凡すべての者ものの上うへに、神かみのイスラエルの上うへに、平󠄃安へいあんと憐憫あはれみとあれ。

17 今いまよりのち誰たれも我われを煩わづらはすな、我われはイエスの印しるしを身みに佩おびたるなり。〘282㌻〙

18 兄弟きゃうだいよ、願ねがはくは我われらの主しゅイエス・キリストの恩惠めぐみ、なんぢらの靈れいとともに在あらんことを、アァメン。〘283㌻〙
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